世界遺産登録推進セミナーin大牟田

司会:友枝大牟田市世界遺産推進室長

オープニングアクト:ドロシーみきこ氏の演奏。

  1. 情熱大陸
  2. 好にいさんの足跡(山口好にちなんだオリジナル曲
  3. チャルダッシュ
  4. 炭鉱節

以下、記録をメモしたもの。詳細は違っているかもしれません。
幕が一旦下りたあとで、まず、古賀大牟田市長あいさつ。
古賀道雄大牟田市長

「本市は炭鉱によりうまれ、その後大正期より日本最古の石炭関連化学コンビナートを形成し、日本産業の近代化に大きく貢献し、いまも本市の経済の中核である。
 発展の陰には囚人労働・捕虜使役・三池争議・炭塵爆発などの負の出来事もあったが、平成9年、三池炭鉱は124年の歴史を終えたが、昨年世界遺産暫定リスト入りする明るいニュースが入った。
 大牟田の宝が世界の宝となる喜ばしいことであり、登録指定を現実化するためにその気運を高めたい。その一歩として行うのが、皆さんといっしょに考えるこのセミナーです。
 大牟田市では今年より推進室を設置しているが、市民行政一体となり世界に輝く本登録となることをを祈念しあいさつと代えさせていただく」

このあと、前畑荒尾市長のあいさつ。
メモしていないので詳細不明。



基調講演:加藤康子氏。(「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会コーディネーター)

加藤康子氏

1:九州山口世界遺産構想。

世界遺産には顕著で普遍的な価値(outstanding universal value)があり、UNESCOが示す世界遺産登録基準を満たしていることが必要。
意義を証明する遺産には「真正性」「完全性」が求められる。
三池は、世界史の中で歴史的意義がある幕末〜明治期に非欧米圏で初めて日本が成し遂げた近代化(重工業)を示す九州山口のシリアルノミネーションのひとつとしてエントリー。

  1. 三池には世界遺産となる可能性はあるのか→YES
  2. 日本の工業化は世界を変えた
  3. 三池には工業化を証明する遺産が残っている
  4. 三池の遺産はユネスコ審査基準を満たしている

前のChairman of English Heritage(2000-2007)であるNeil Cossons氏いわく、
  1. 九州山口がOUVを満たす世界遺産的価値があることに自信がある
  2. 日本・世界双方にとって価値がある
  3. 国際的世論(筆者注:学会か?)の支持がある
  4. 2012年には専門家委員会で推薦書の準備が整うので、日本は亜細亜の近代化遺産群一号として提出すべき
  5. 九州山口は単体ではなく,シリアルでOUVの完全性を持つ
  6. UNESCOは2015年以降シリアルノミネーションを絞る予定で、チャンスを逃してはならない
  7. この遺産群では企業が稼働させつつ遺産を維持していることが本質的な価値のひとつ。三菱長崎・八幡・三池港の存在は遺産群において不可欠。企業活動に支障がないように価値を担保せねばならない。
そのほか、専門家の中での評価も高い。

2:世界遺産と三池。

システムとして産業を理解するうえでは、面の形で理解することが必要。
それでは何を守るべきか。

閘門を通る曳舟
  1. 1.港湾の形状のスケール感(公有水面が世界遺産・埋め立ては×)
  2. 2.防波堤と明治の岸壁
  3. 3.閘門周辺・税関
  4. 4.内港への水路にある4つの階段

遠浅の有明海に対応する防波堤や閘門など当時の技術の粋をつくした築港技術は日本の近代化の証左であり、明治期における国内石炭の重要性と財閥の経済力を示す。
現在はコンクリートでおおわれた防波堤を明治のものに戻したり、閘門を観光に合わせて開閉することは、産業遺産では遺産保全といえない。
産業遺産の価値は美観ではなく、歴史を背負った現役港としての現代の姿である。
現役港には港の安全な運営と管理が必要。工業遺産の保存には最低限の介入という指針がある。
ヴェニス憲章バラ憲章などの基準もある。
三池港を長崎ハーバーや門司港のように公園化することは工業港としての三池港の性質を損ない、世界遺産価値形成に悪い影響を与える。価値を傷つける観光開発がなくても観光は可能だ。
また工業遺産・産業遺産については、それが廃墟状態だとしても日本の通常の文化財の保全に対する概念とは基準が異なる。

では、世界の産業遺産(Liverpool・cornwall・カールスクルーナ軍港、インドの山岳鉄道)はどういう手法で保存されているのかといえば、ほとんどが文化財保護単体での保護ではない。
既存の文化財保護法単一では現役稼働資産である三池港の価値を維持するための解決手段足りえず、港湾法と民間企業の契約保全でUNESCOの基準を満たすことが可能である

産業を支えた人々、歴史の教科書には登場しない人生、文化、記憶を次世代に残し、世界遺産にむけてがんばりましょう。

パネルディスカッションへつづく



2010.08.03記録。


2010/08/14 wrote: