司会:友枝大牟田市世界遺産推進室長
オープニングアクト:ドロシーみきこ氏の演奏。
「本市は炭鉱によりうまれ、その後大正期より日本最古の石炭関連化学コンビナートを形成し、日本産業の近代化に大きく貢献し、いまも本市の経済の中核である。
発展の陰には囚人労働・捕虜使役・三池争議・炭塵爆発などの負の出来事もあったが、平成9年、三池炭鉱は124年の歴史を終えたが、昨年世界遺産暫定リスト入りする明るいニュースが入った。
大牟田の宝が世界の宝となる喜ばしいことであり、登録指定を現実化するためにその気運を高めたい。その一歩として行うのが、皆さんといっしょに考えるこのセミナーです。
大牟田市では今年より推進室を設置しているが、市民行政一体となり世界に輝く本登録となることをを祈念しあいさつと代えさせていただく」
世界遺産には顕著で普遍的な価値(outstanding universal value)があり、UNESCOが示す世界遺産登録基準を満たしていることが必要。
意義を証明する遺産には「真正性」「完全性」が求められる。
三池は、世界史の中で歴史的意義がある幕末〜明治期に非欧米圏で初めて日本が成し遂げた近代化(重工業)を示す九州山口のシリアルノミネーションのひとつとしてエントリー。
システムとして産業を理解するうえでは、面の形で理解することが必要。
それでは何を守るべきか。
遠浅の有明海に対応する防波堤や閘門など当時の技術の粋をつくした築港技術は日本の近代化の証左であり、明治期における国内石炭の重要性と財閥の経済力を示す。
現在はコンクリートでおおわれた防波堤を明治のものに戻したり、閘門を観光に合わせて開閉することは、産業遺産では遺産保全といえない。
産業遺産の価値は美観ではなく、歴史を背負った現役港としての現代の姿である。
現役港には港の安全な運営と管理が必要。工業遺産の保存には最低限の介入という指針がある。
ヴェニス憲章、バラ憲章などの基準もある。
三池港を長崎ハーバーや門司港のように公園化することは工業港としての三池港の性質を損ない、世界遺産価値形成に悪い影響を与える。価値を傷つける観光開発がなくても観光は可能だ。
また工業遺産・産業遺産については、それが廃墟状態だとしても日本の通常の文化財の保全に対する概念とは基準が異なる。
2010.08.03記録。